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​適正在庫とは

​①適正在庫とは

欠品を出さない最小限の在庫数をいう。

在庫が不足すると、注文が入ったときに商品を出荷出来ず販売機会の損失につながる。

適正在庫を維持することで企業の利益を最大化することができる。

欠品防止のために在庫数を増やしすぎても管理コストがかかり、不良在庫や廃棄する在庫が出てくる。
在庫が過剰になると、保管効率や在庫回転率の低下を引き起こして企業の資金繰りに悪影響を及ぼし、在庫は資産だからといって現金化せずにいると、黒字倒産するケースになる可能性もある。

②在庫の過剰によるリスク

・商品の品質劣化

・不良在庫の発生

・保管にかかる倉庫費や人件費の増大

・値引き商品の増加 ※決算時などに値引き販売やたたき売り

・商品回転率の低下

欠品しないと同時にコストを最小限に抑える在庫量に調節する必要がある。
出荷量の平均やばらつき、在庫補充の頻度、需要変動などを考慮し、常に過不足のない状態に保っておくのが理想的である。

適正在庫を保つメリットは、保管する在庫を減らせるので、保管スペースやコストを削減できることである。
キャッシュフローが良くなり、利益を安定して出せるようになる。

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③在庫管理上でよくある問題点の事例

問題点の多くに在庫管理で、「品目ごとの適正な在庫量がわからない」といった課題がよく耳にする。

 

品目数が多すぎる

 

品目数が多く品目毎の適正在庫量を精緻に算出するのに手間がかかるため、対象が限定的になる。

その結果、発注点などの設定値をメンテナンスされるべき品目がそのまま放置されるなどの状態が発生。

適正在庫量を判断する基準がない

在庫月数、在庫日数、在庫回転率など保有する在庫の量を判断する基準が決められていないため、担当者個々でバラバラの水準になっている可能性。

在庫理論で計算しても上手くいかない

在庫理論に基づき計算して補充量などを算出しても、最終的には欠品を恐れ、安全在庫を安心在庫として多めに修正したりする。

欠品が怖いため前任者の設定を変えたくない

長年システムの設定値を修正せずに前任者の状態のまま運用を続け、問題が起きてから対応する状況が続いている。※よくありがちである

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④適正在庫計算
安全在庫+サイクル在庫

サイクル在庫とは、発注してから次に発注するまでの間に消費される在庫量の半分のことである。
仮に、毎月1日に発注するのであれば、約15日間に消費される在庫量がサイクル在庫となる。
安全在庫とは、需要やリードタイムに多少の変動があっても対応できるように備える量のことであり、安全在庫日数として数ではなく日数ベースで考えることもある。

いずれの数値も、市場の状態やこれまでの経験からケース別に予測する必要がある。


在庫が適正かの確認

自社が適正在庫数を保てているかを判断するのに必要なのが、在庫回転率と在庫回転期間。

回転率=年間売上高÷平均在庫高
回転期間=棚卸資産合計÷年間売上高

回転率とは、1年に在庫が入れ替わった回数を示す数値のことである。
平均在庫高1,000万円で年間売上高が3,000万円の場合、在庫は年に3回ほど入れ替わったことになる。
回転期間とは、倉庫資産が完全に入れ替わるまでに要した年数のこと。
棚卸資産が2,000万円で、年間売上高が1,000万円の場合、在庫が入れ替わるまでに2年を要したことになる。

つまり回転率の数値が大きく、回転期間の数値が小さいほど在庫が適正である。

適正在庫金額を算出する「交叉(コウサ)比率」

交叉比率とは、その在庫でどれだけ儲かっているのかをみる指標のこと。

交叉比率=在庫回転率×粗利益率

在庫回転率が4、粗利益率が30%のときは120となるが、
在庫回転率が3、粗利益率が40%であっても交叉比率は120となる。
在庫によって計算式は変わるが、交叉比率は高いほうが効率が良い商品になる。

交叉比率÷粗利益率から目標の回転率を算出し、目標売上÷回転率から適正在庫金額を算出できる。
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移動平均法

過去の売上から算出される「移動平均」をもとに需要予測をする手法。一般的には昨年の売上データの平均を利用して求める。
移動平均は、仕入れた時点の商品(受入棚卸資産)と在庫棚卸資産の平均原価を計算することによって求める。
なおこの計算方法を用いる場合、仕入れの都度計算する必要がある点に注意。
移動平均単価=(受入棚卸資産の評価額+在庫棚卸資産の金額)÷(受入棚卸資産数量+在庫棚卸資産数量)
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指数平滑法

過去の販売の予測値と実績値を割り出すことによって導き出される「予測値」を用いて需要を予測する手法。

計算式の中に出た「a」は、平滑定数または平滑化係数など。
予測値は、前回の実績値が予測値からどれだけ離れていたか、平滑定数aを掛け修正値を求めることによって算出される。

予測値=a×前回の実績値+(1‐a)×前回の予測値 (0≦a<1)=前回予測値+a×(前回の実績値-前回の予測値)
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加重移動平均法

移動平均法の一種で、移動平均法よりも最新の需要変動の影響を加味した手法。
「加重移動平均」は、各月の販売数量に加重係数をかけ合わせることによって求められる。
場合によっては移動平均法よりも正確な結果が期待できる。

 

※加重係数の合計は1

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ウインターズ法(季節傾向モデル)

 

ウインターズ法による需要予測は、季節によって変動する需要や、長期的な増加や減少傾向を需要予測値に反映させる指数平滑法を用いた手法。

季節変動を考慮する季節モデル、傾向を考慮する傾向モデル、その両方を考慮する季節傾向モデルといったものがある。

需要予測値の計算

 

基準値、傾向値、季節変更値の計算は、それぞれ過去の実績を指数平滑化することで、今期の値を以下のように算出する。

次期需要予測 = (今期の基準値 + 今期の傾向値) × (1周期前+1期の季節変動値)

基準値、傾向値、季節変動値の計算

今期の傾向値 = β(今期の基準値 – 前期の基準値) + (1 – β)(前期の傾向値)

今期の季節変動値 = γ(1周期前の実績 ÷ 1周期前の基準値) + (1 – γ)(1周期前の季節変動値)

このように3つの要素を合成することにより、トレンドと季節傾向を加味した需要予測値を求めることが出来る。

今期の基準値 = α(今期の実績 ÷ 今期の季節変動値) + (1 – α)(前期の基準値 + 前期の傾向値)

⑤適正在庫の運用方法
 

需要予測を立てる

商品を発注する際には、必要量を予測する必要がありまる。
そのため、発注する商品の需要を予測することが欠かせない。
需要の予測には以下のような方法がある。

■クライアントに聞く
■統計のデータを参照する
■市場の動向を見る

B to Bの取引であれば、直接クライアントに聞くという方法がある。
しかし、一般の消費者に向けて商品を販売する場合はそれができない。
そのため、統計データなどから推測するしか方法がない。
その際には、前年の同じ時期の需要や、過去数か月間の販売数の平均値を参考にする。

季節要因の大きい商品は平均値よりも時期のほうが重要になるなど、商品の特徴を踏まえて考えることも大切である。

時系列分析

今までの販売実績を時間経過に沿ってデータ分析する方法です。計算法によっては過去の流行なども分析の要素に入るため、一般的には販売データが長年にわたって残っている場合に用いられる。

「時系列分析」では、季節による売れ行きの違いを加味するか、過去の流行が再燃すると仮定するかなどの要素の有無によって、一般的には4つの手法が使われている。

■非季節手法
■季節手法
■ARIMA(自己回帰和分移動平均)モデル
■重回帰分析

同期化による在庫削減
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目標在庫コントロール
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​年間在庫平均から計算する

在庫は1年の間でも大きく変動する。
季節商品であれば、需要がある時期とない時期とでは保管される在庫数が大きく異なる場合がある。

適正在庫を決めるときは1ヶ月や1シーズンなどの短い期間ではなく、最低でも1年間の在庫の変動を追跡し平均在庫を求めてから決めるようにしていく。

​定期的に最適化を行う

1度適正在庫の値を定めたらしばらくはその値を基準として運用をしてみる。
在庫の過不足が起きる頻度が減れば、そのまま運用を続けて良いと考えられる。

在庫過剰や欠品が減らない場合は原因を究明し、再度適切な値を定めるようにする

また上手く運用出来ている商品についても、1年後も同じ値でよいとは限らない。
会社の方針転換であるカテゴリの商品の取り扱いが減る、ということもある場合がある。
定期的に最適化し続けることを意識する必要がある。

定期発注と定量発注を使い分ける

発注方式には大きく分けて以下の二つ。

■定期発注方式
■定量発注方式

定期発注方式とは、毎月1日に発注といったように定期的に発注する方式。

発注時期が在庫量に左右されない分、発注量は毎回決めなくてはならないため手間がかかる。
発注するたびに需要をしっかりと予測したい重要商品に対して用いられる方式。

定量発注方式とは、発注点(あらかじめ決めた発注のタイミングとなる在庫数量のこと)を在庫量が下回ったときに発注する方式。

発注時期はその都度左右されるが、発注量は毎回同じになるのが特徴。
毎回需要予測をしないため、比較的需要が安定しているものに適用される方式。

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​⑥リードタイムを短縮させる

製造リードタイムを短縮させる
 

適正在庫数を維持するためには、製造リードタイムの短縮も欠かせない。
製造中の商品も在庫として保管しなければならないため、製造リードタイムが長いほど、管理すべき在庫の量が増えることになる。
逆に、製造リードタイムを短くできれば、発注から出荷までの時間が短縮することになり、抱える在庫の量は少なくなる。

製造リードタイム以外のリードタイムも短いほうが望ましいのは間違いない。
調達リードタイム(部品などの調達に要する時間)や物流リードタイムは他社の手を介するため、自社の工夫だけで短縮するのは困難。
まずは、自社でコントロールしやすい製造リードタイムの短縮を試みる。

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リードタイムの低減

顧客または販社に受注を受けて納品するまでの時間のこと。

リードタイムはその企業の総合力が問われる。

 

リードタイム短縮の4つのポイント

•段取り時間の短縮

•標準化

•工程設計の検討

FA(製造業における工場の自動化)

・材料や部品の準備は、LTの構成時間の中で

 手配時間(段取り)として、カウントされる。

・手持ちのムダ;動かない状態

・在庫は、在庫日数などで適正在庫量 

 を数値化する。

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​⑦システムを活用する

在庫管理システムの導入
 

適正在庫の維持を実現するのであれば、在庫管理システムの導入が良い。
在庫管理システムとは、在庫が入荷されてから出荷されるまでの位置情報や入出荷日時・賞味期限といった在庫情報を管理できる。さらに、在庫の入出荷情報を活用して在庫分析を行い、適正な在庫数を確保できるようになる。
在庫数や扱う在庫の種類が多い場合は、在庫管理システムで適正在庫を確保するとともに業務の効率化を実現。

ハンディーの活用

在庫管理の基本は、保管場所の確保と「整理・整頓・清掃・清潔」を遵守して在庫を適切に管理する。

「何が、どこに、どのような状態」で在庫されているのかを明確にする。

保管場所の「棚・列・段」に番号を割り振って保管場所を決め、保管場所からの入出庫を帳簿に記録する。実際の運用の場合、「あるはずの場所に品物がない」「帳簿のデータと実際の数が異なる」等の問題が発生する。

 

(問題の発生原因)

•現場で正確に品種・数などが記録できていない

•入出庫管理で入力漏れやミスが発生している

•持ち出しや保管場所の移動などを管理できていない

•品物の管理が悪く、破損や紛失が起きている

上記の多くは管理の仕組みや組織の問題、人為的ミス。

在庫管理では、モノが移動するときに一緒に伝票がセットで動くこと、帳簿データに入力することが重要だが、忙しい現場で完璧に実施することは困難である。

特に少量多品種になっている現代は、手で入力していては手間もかかり、入力漏れ・ミスが発生するリスクも大きくなる。

バーコードや2次元コードを付与し、ハンディターミナルなどを活用した在庫管理システムが有効である。

品物やロケーション(棚・列・段)のバーコードの読み取り、数量などの情報を入力して登録します。ロケーション管理ができていない場合は、バーコードを発行して棚などに貼り付けていきます。すべての品物とロケーションの登録ができれば、あとは入出庫や移動の際にバーコードを読み取るだけで正確な現物管理が可能。

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AI(人工知能)の活用

AI(人工知能)は、需要予測ならびに在庫管理の分野においても大きな力を発揮してくれる。

たとえばコンビニのように各地に多数の店舗を構えている場合を想定すると分かりやすい。
出店地の立地や天気、近隣で開催されるイベントなどの要素を総合して、各店舗で仕入れるべき商品の数をAIが予測してくれる。
それによって、無駄な在庫や廃棄しなければならない商品を最小限にすることが期待できる。

​⑧まとめ

在庫管理は製造業の生産管理の中でも、企業の財務部門が気にするくらい、もっともコスト削減効果が実現できる領域である。
この部分の改善は、一日でも早いほうが良い。
在庫を効率良く適正にコントロール出来ることで、ムダの排除につながる。
在庫管理と言っても奥が深い領域であるのは間違いない。
更に適正在庫となると、いろいろな計算方法があり自社に合った計算方法を取り入れなければならない。

これら解決策には、在庫管理システムの活用が一番便利である。
在庫管理システムと言っても数多くあるが、導入実績が多く、機能が充実しているシステム、適正在庫のいろいろな計算方式に対応したシステム、近頃はAI(人工知能)による予測計算などシステムも登場している。

いろいろと社内で議論しても何も進まないので、思い切って在庫管理システムを導入すれば、先が見えてくると言えるくらい在庫管理システムの導入は有効である。

© 2023 by JPSeizo

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